あれは夏の日の夜でした
彼が
少し酔っぱらってタクシーに乗ってきました
行くところのなかったわたしたちは
このベンチに座りました
彼は
わたしを抱きしめたまま
離そうとはしませんでした
恥ずかしくて
スカートがめくれそうで
わたしは気が気ではありませんでした
でも彼は
そのまま動こうとはしませんでした
気付いたら何時間もたっていました
本当は誰の前でも笑い合いたかった
本当はどこでも堂々と手をつなぎたかった
本当はずっと一緒にいたかった
なぜ
そうできなかったのか
二人とも
幼過ぎたのか
頑固過ぎたのか
周りを気にし過ぎたのか
勇気が足りなかったのか
もう忘れた方が良いのでしょうか
それとも・・・
マイナス20度の冬空の下で
雪をかぶってもなお
ベンチは相変わらずそこにあって
なにも語ることはないのでした
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