オバマ氏の就任は、アフリカと縁が深く、リベラル派としてアメリカで暮らしてきたわたしには嬉しいことだった。
けれど、彼の就任演説を5回ほど繰り返して聞いたけれど、同じところでひっかかる。
「アメリカは、世界のリーダーであり続ける」というものだ。
わたしは、思う。
誰かがリーダーでみんながその後を追って行く時代はもう終わった。
アメリカ経済が破綻したら日本もドミノ式に倒れ、日本が倒れたら中国も倒れるような時代はもう古い。
政府が破綻したら国民も路頭に迷うような暗黒の時代は、もう色あせたアルバムの時代の話しだ。
なにを言っている、オバマさん。
わたしはあなたの自伝は好きだったし、政策にももっともなことが多く共鳴はしているけれど、そりゃないでしょう?
もちろん、大統領になったのだから、国民を鼓舞するために言わなきゃならないこともあるかもしれないけれど、ちょっと時代遅れじゃありません?
わたしは、そう思った。
就任演説全体は悪くなかったけれど、アメリカの歴史と世界のリーダーの話しには、実は食傷気味であった。
わたしはアメリカが嫌いではない。
嫌なとこも沢山あるが、わたしにとっては大切な国である。
しかし、アメリカが世界のリーダーであるなんてのはお門違いだとずっと思っている。
ところが、先ほどたまたま見たテレビ番組で、オバマさんの「アメリカはリーダーであり続ける」の場面に感動した、という男性の政治コメンテイターがいて、わたしは唖然とした。
もしかして、それって男のメンタリティ?
男というのは、とにかく組織や力関係や「強きもの」が好きなようだ。
実際に、縦社会と命令に従うのが好きという特性が男性にはある、と社会学と生理学では言われている。
やくざの世界の話しを聞いても、政界を見ていても、会社という組織のありかたを見ていても、「男って群がって力争いするのが好きだよね〜」と女としてのわたしは思っていたけれど、生理的にそうだと言われたら受け入れるしかない。
それに、リーダーにはリーダーの役割もあるし、上下関係にもそれなりの道理と良さもある。
しかし、わたしは思う。
世界はアメリカなんかについて行ってはダメだ。
わたしはアメリカに長い間住んでいたから知っている。
世界のあちこちの国を見たからこそ思う。
それぞれの国は、それぞれの国の個を生き、そのうえで連携しながらやってゆかねば人類は滅びる。
日本には大きな負の遺産がある。
戦争という遺産である。
明治以来の帝国主義という遺産である。
多くのひとを殺し、多くのひとの自尊心を傷付け、己を一番深く傷付けた。
それを生かすのだ。
負は正へと転身する大きな力だ。
矢は一度後ろへと大きく引かなくては、遠くへは飛ばない。
この国は戦争を二度としない、という反省の上になりたった掟を、守るのだ。
ひとを傷付け、傷付けられることの辛さは骨身に沁みて知っている。
これほどひとを一度に殺し、そして殺された国はほかにはない。
未だに原爆の後遺症は続いている。
多くのひとの心に傷を残し、それが後世のわたしたちにまで響いている。
しかし、本土戦を経験したことのないアメリカ人には、戦争の本当の辛さは分らない。
だから戦争によってあそこまでの大国に成り上がってくることもできた。
日本はこの一点において、先頭に立ち、平和の大切さを世界に向って説くのだ。
また、この国に資源は少ない。
だからこそ精神性の大切さを知っている。
つつましくてもこころ豊かに生きる、その本当の意味と良さを知っている。
自然とともに生き、そこに幸せを見いだす法も知っている。
アメリカのように、なんでも大きくて、なんでも強くて、なんでも広いのがいい、という国とは違う。
持っている資質も、歴史も違うのだ。
だから思い出すのだ。
人生は、ただ金持ちになるだけが幸せではない、力さえ強ければ良いのではない、という昔からの精神性を。
人間にとって本当に大切なのは物理的優位性ではなく、精神的優位性である、と。
そして人口過多となっている地球に住む他の国々のひとびとに、それを身をもって示すのだ。
有色人種のなかでも「成功」した日本人に耳を傾ける世界のひとびとは、沢山いるのだ。
どこの国もアメリカのようになろうとしたら必ずつまづく。
日本は日本のもつ遺産と資質と正面から向かい合い、この国の道をまっすぐに歩むしか他に幸福への道はない。
しかし、すでにいまの日本は、戦争状態である。
毎日80人以上のひとが自殺し、毎日300人以上の子どもたちが性的いたずらや虐待や殺人のターゲットになっており、過労でどんどんひとが倒れ死に、いじめや電車内の痴漢行為は日常茶飯事であり、昨年は多くのひとが突然解雇されて路頭に迷っている。
乱世どころではない。
内戦状態だ。
戦争中のイラクで毎日多くのひとが死亡しているが、アメリカ政府が出したイラク人年間戦死者数と、なんと日本の年間自殺者数はほぼ同じなのだ。(実際イラクの死亡者のほうが多いのだと思われるが、過労死、ひきこもり、鬱病患者などを含めると日本の状態も悲惨なものである。それに、これだけ親が子を殺し、子が親を殺す国なんて、世界中どこをみても、日本しかない。)
ひとの真似なんかしようとするから、どうでもいい本質からはずれた力争いに自ら身を投げるから、こんなことになる。
それは、すべての国にいえることだと思う。
互いを知り、刺激し合うのはいい。
しかし、ほかの国なんかに着いて行ってはならない。
言いなりになんかなってはならない。
なぜなら、ひとはそのひとの人生以外、ほかのひとの人生を生きられないのとおなじように、国もほかの国とおなじ運命をたどることはできないからだ。
そして、世界の人口の半分は女性である。
その女性が政治の世界には半分いないのはおかしい。
大統領や首相がどうしても必要ならば、女性と男性2人いて当然である。
そうしないと、この世から戦争がなくなることはないだろう。
力争いとリーダー好きは男性の特性なのだから。
女性が政治の世界にいないとこのまま人類は自滅してしまうこともあるだろう。
そして女性も、もっとひろい世界に目を向け、政治にも関心を寄せなくてはこの社会が変わることもないだろう。
わたしは、そう思う。
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