NHK『篤姫』の最終回を見ました。
録画していたものを見たのですが、最後に大切なメッセージがあると感じました。
「ひとは、みな、その天命を果たすために生まれてくるのじゃ。」
その通りだと思います。
篤姫は、薩摩藩に生まれ、徳川宗家へ輿入れし、江戸の終末から明治の夜明けの時代を生きた方です。
そして、江戸城の無血開城を果たし、徳川家の存続を果たした方でもあります。
ひとかたの人物だったと聞きます。
彼女の言葉通り、ひとにはそれぞれ天命というものがあり、それを果たすために生まれてくるものだとわたしも考えます。
ひとによっては、世の中にでて人前で生きて行くことが天命かも知れませんし、ひとによっては、静かに目立たず穏やかに生きて行くことが命かも知れません。
ひとによっては大きな財を築き世の中に貢献することかも知れませんし、ひとによっては貧しい中でも懸命に生きることかも知れません。
ひとの命(めい)はそれぞれが持つもので、ほかのひとと比べたりするものではありません。
どれがより良く、どれがより幸福かと言えるものではないからです。
そのひとの命(めい)はそのひとのものであり、そのひとにとって最良の生き方なのです。
大切なのは、自分自身の命(めい)を知り、それを生きることです。
静かに生きるはずのひとが、世の中にでるとストレスになるでしょう。
逆に、大海を泳いで生きるはずのひとが、どこかでひっそりと生きると逆に腐ってしまうことでしょう。
例えば、篤姫のような生き方はほかのひとにはできなかったことでしょう。
高い地位と、名誉と、物理的には恵まれた生活でしたが、女としての幸福にはほとんど恵まれず、大きな重圧と責任のなかで生きなくてはならない生涯でした。
NHKの番組では、夫、家定との関係性はかなりロマンチックに描かれていますが、実際にはそのようなロマンチックなものではなかったようです。
家定には脳障害があったらしく、健康体のひとのようなこころの通い合う夫婦生活はなかったと言われています。
また、幼なじみで恋心を持たれていたとされている小松帯刀という人物とも、現実にはかかわり合いがなかったそうです。
なんにしろ、昔の武家の女性には、性的な歓びや男性との恋心などは一般的には許されておらず、家と名誉のために生きることが求められていました。
そうして男性は、外に性的に満足させてくれる女性を囲い、武家の女性は、黙々と家と名誉を守って生きたのです。*
篤姫の生涯も例外ではなかったのです。
しかも、位が高かった分だけ、制約も多かった。
朝起きてから夜寝るまでひとに囲まれ、大奥をとりしきり、自分の自由になる時間は少なく、好きなときに好きなところへも行けず、夫には自分から会いにゆくことは許されず、ひたすら向こうから求めて来ることを待たねばなりませんでした。
そして、夫には他にも公然と愛人がいたのです。
それだけでなく、夫に声をかけられるのを待っている女たちが身のまわりのいたるところにいて、彼女たちの世話までするのが篤姫の責任だったのです。
もちろん、篤姫が愛人を持ったり、誰かにときめいたり、性の歓びを追求することは許されず、そればかりか夫の死後までも出家という形をとり夫への忠誠と貞節を守ることとなったのです。
彼女は、まだ20代だったというのに・・。
そのような人生を現代女性に送ることできるか、その上であれだけのことをなし得るか、というとなかなか難しいと思います。
けれど、江戸時代に、上級武士の娘として生まれ、教育を受け、ある種それが当然と思っていた篤姫にはそう不自然なことでもなかったでしょう。
また、それだけの才気を持って生まれたひとだったのでしょう。
きっと彼女は自分の人生を受け入れ、その中で生き、彼女なりの幸福だったのだろうと思います。
江戸城を無血開城することに貢献して多くのひとの命を救い、維新後もひとびとの生活を守り、民と家臣に慕われ、信念を通したひとだったのです。
「ひとは、みな、その天命を果たすために生まれてくるのじゃ」
この番組には、疑問点も多くありましたが、この言葉だけは、篤姫のこころに近いものだったような気がしています。
そして、これは、すべてのひとにあてはまず真実の言葉です。
いまの世の中には、自分の天命に目を向けるより、テレビや雑誌で騒がれる「恰好いい生き方」にばかり目を向けたり、社会で言われている「これがエリート」だとか「これが幸せな人生」というマニュアル的なものに振り回されたり、まわりのひとと自分を比べて優越感や劣等感を持ったりするひとが多くいます。
けれど、自分なりの天命をまっとうすることが、課題であり、最終的には幸福なのです。
そして、すべてのひとに、そのひとの天からの命があるのです。
あなたは、ご自分の天命を知っているでしょうか。
今、ちょうど、山羊座の新月が終わったところです。
これから休みの時期にはいり、世の中は少しだけ静かになります。
天の声に耳をすませてみましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(魔女)
*武家社会の女性の性の矛盾については、「おまんこシスターズ」という挑発的なタイトルの本などを書き、日本の女性問題を取り上げてきた東大大学院教授の上野千鶴子さんの著作に現されています。また、ご自分やまわりの女性のありかたを見たり、武家を祖先に持つひとのありかたを見ると、今でもその名残があちこちにあることに気付くと思います。
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